幼稚園児に見せるマジックを選ぶ際の考え方

幼稚園児に見せるマジックを選ぶ際の考え方小学校に入学する前後のお子様にマジックを見せるときは、大人に見せる時とは全く違う見せ方をする必要があります。

大人は人生経験が長いので、当たり前のことと、当たり前ではないことの区別がつきます。そのため、当たり前ではないことを行えば不思議だと感じてくれます。

しかし、幼稚園児はまだ人生経験が少なく、何が当たり前で、何が当たり前ではないかを理解できる幅が、大人と比べてとても少ないです。

そのため、幼稚園児にマジックを見せる場合は、彼らにとって限りなく少ない「当たり前ではないこと」を見せなければ、何が不思議なのかを理解してもらえません。

幼稚園児の人生経験を考慮に入れたマジック

幼稚園児にとって当たり前ではないマジックを選ぶには、大人に見せる場合と比べると、かなり選択の幅が狭く大変です。

マジックは、不思議な現象が起きるまでの過程を理解していないと、現象が起きた時に何が不思議なのか理解することができません。

例えば、「相手が選んだカードを当てる」というマジックを行う場合、そもそも相手が自分で選んだカードを覚えていなかったら、例えそのカードが当たっていたとしても何が不思議なのだか理解できません。

また、「相手が選んだトランプを、マジシャンが見ていないのにも関わらず当てられる」ということが、普通は不可能であるということを相手が理解できていなけらば、不思議さは伝わりません。

幼稚園児ぐらいの年齢の子供たちは、この理解できる幅が極めて狭いと言えます。そのため、幼稚園児にマジックを見せる場合は、想像以上に簡単なマジックを行わなければ喜んでもらえません。

また、カードマジックで園児にトランプを覚えてもらうことは、彼らにとっては難しく理解できないことです。

しかし、例えばトランプの絵柄をイチゴのイラストに代えたうえで「覚えて下さい」といえば、幼稚園児はイチゴを食べたことがあり、甘くておいしいものと経験しているので、簡単に覚えることができます。

このように「自分が幼稚園児だったら理解できることは何か?」を真剣に考えてマジックを行わなければいけません。

「このぐらいは理解できるだろう」という考えで行なったマジックは、ほとんど理解されません。

理解できないマジックを行なってしまうと、つまらないことに対する子供の集中力は短いので、あっという間にマジックを見てくれなくなってしまします。

そのため、幼稚園児ぐらいの年齢の子供たちにマジックを見せることがいちばん難しいと言えます。

私が幼稚園児に教えてもらったこと

私がマジシャンになったばかりのころ、幼稚園でマジックを見せる機会が訪れました。その頃はまだ経験も浅く、幼稚園児の気持ちを考えずに演じるマジックを選んでしまいました。

そのため、いざショーになったら、彼らにとっては難しく感じるものばかりでしたので、全く集中して見てもらえませんでした。

今思うと、自分が凄いと思うマジックやかっこ良く見えるマジックばかり選んでしまったと、当時のことを反省しております。それは、幼稚園児にとってつまらないマジックを押し付けてしまったことになるからです。

しかし、そんなショーの中でも唯一ウケた瞬間がありました。それは、子供たちがみんな知っているキャラクターの人形を使ったマジックを行なったときです。

マジックを始めるために人形を出した瞬間に、子供たちの興味が一気に集まり、目がキラキラと輝き始めたのを今でも鮮明に覚えています。

このマジックは、自分にとっては難しいことでも、凄いことでもなく、単なる子供向けマジックで、プロのマジシャンが演じるようなことではないと思っていました。

しかし、いざ演じてみると、このマジックがいちばん盛り上がり、私はこのマジックに救われる結果となったのです。

それ以来、幼稚園児にマジックを見せる際は、実際に彼らの気持ちになってマジックを演じるように心がけるようになりました。

マジックを趣味にしている方は、幼稚園でマジックショーを演じる機会もあるかと思います。

そのときは、ぜひ彼らにとって容易に理解することができ、「マジックを見ることがつまらない」と思われないようなマジックを演じて下さい。

その為には、先ず演者自身が園児になる必要があります。

園児目線で楽しめるマジックを演じることができれば、きっとマジックを通じて子供の豊かな心を育てることに貢献できるはずです。

ちなみに、私は子供の豊かな心を育てる活動は、マジシャンとしての使命であると考えております。