タレント初心者の頃は、何もしなければ仕事は決まりません。初めは、自分から積極的に売り込みを行うことになります。そのためオーディションに参加します。
オーディションでは募集人数が数人なのに対し、ときには何千人ものタレントが参加します。ものすごく高い競争率に勝ち残り、ようやく手にすることができる仕事もあるのです。
そのため、オーディションには真剣な気持ちで参加しなければなりません。
オーディションに参加するタレントが、審査時に気を使うのは当たり前です。ただ、オーディションは審査時以外のところでもチェックされています。
「廊下ですれ違ったスタッフにきちんと挨拶ができているか」や、「控室で待機している時は携帯ばかりいじっていないか」といった、態度も審査対象になっています。
「本番だけきちんとしよう」という考えで臨むと、それ以外のところで評価が下がることもあり得ます。
いつもどこかで、「誰かに見られている」という緊張感を常に持ち続けることが大切です。
オーディションは遊びではない
よくあるのが、待機時間に行われる連絡先の交換です。プライベートのパーティーで、他の参加者と連絡先を交換することは問題ありません。ただ、オーディションという場でお互いの連絡先交換は控えるべきです。
タレントには守秘義務があります。
タレント活動をする上で知り得た、発売前の新商品のことや、他のタレントの個人情報は他人に漏らすことは許されません。タレントの仕事は極めて秘匿性が高いからです。
積極的に携帯で連絡先を交換するような人は、「この人はしっかりと守秘義務を守ろうとする意識があるのか?」と相手に疑われることになります。
オーディションは遊びではありません。プロのタレントとしての意識をしっかりと持って臨むことが重要です。
上辺だけ取り繕ってもオーディションには合格しない
以前、テレビでアイドルのオーディションに密着する番組を見たことがあります。その番組では、オーディションの本番以外の場所にもカメラを仕込み、参加するタレントの行動をチェックしていました。
テストとして、花瓶の花をわざと廊下に落としておき、そこを通るタレントがどのような行動をとるか確認します。
そこでは、花を花瓶にもどす人もいれば、気付いているのに素通りする人、どうして良いか分からず立ち止まる人など、人により取る行動はさまざまでした。
そして、オーディション本番での態度と先ほどの行動を比較します。
本番では、落ちている花に対して適切な対処を取った人よりも、むしろ見向きもしなかった人の方が、愛想よく自己アピールできている人もいました。
ただ、どんなにオーディション本番で愛想よく自己アピールができたとしても、本番以外の部分が良くなかった人は落ちていました。
ここでは、落ちている花に対して適切な対処ができた、心優しい人が合格していました。
このように、オーディションでは、どこで誰があなたの行動をチェックしているか分かりません。自分自身を客観的に見て「これはないな」と思うような言動はつつしみましょう。
オーディションでは本番以外も観察されている理由
タレントとして働くには、他のスタッフと協力することが大切です。例えば、スタッフが急いでいる場合、素早く通り道を譲れる気遣いが求められます。
私はプロのマジシャンです。以前あるテーマパークで、マジックショーの仕事をしていたことがあります。そこではスタッフが、私がうまくショーを行えるように、道具の運搬や時間管理を行なってくれます。
これはとてもありがたいことです。そのため、このような行為に対して、逆に私もスタッフが動きやすいように配慮する必要があります。
なぜなら、スタッフもマジシャン同様、仕事で失敗したいとは思っていないからです。
このように、良いショーを行うには、お互い相手のことを気遣い、対等の立場で仕事ができることが重要になります。
これらのことから、タレントの「気遣い」や「協調性」といったホスピタリティーは、オーディションだけでは分かりません。オーディション以外の行動も観察することでわかります。
そして、これがオーディションでは本番以外も観察されている理由です。
以上のように、上辺の印象だけよく見せてもオーディションには合格しません。タレントは、スタッフや関係者と良好なコミュニケーションを取ることができ、人としての道理に反しない行動ができるかが求められます。
オーディションを受ける際は、人として良識ある行動を取っているか、常に自分自身に問いかけながら臨むことが合格への第一歩です。