「宵越しの金は持たぬ」と聞くと、何だか羽振りが良く男気に溢れるイメージがあります。ただ、タレント活動をする上で宵越しの金を持たないのは問題です。
タレントは代替えが効かない責任ある仕事です。不慮の事故や病気で急にお金が必要になることもあります。
また、毎月固定給が入り、雇用が保証されているわけでもありません。今月は仕事で忙しくても、来月は暇になってしまうことも考えられます。
今は脂がのって稼げていても、長い目で見れば、老後はどうなるか分かりません。老後は間違えなく体力が衰えるので、若いころのように仕事をたくさんこなし、稼ぐことはできません。
そのため、お金の管理は老後のことまで考え、若い頃からしっかりと行う必要があります。
タレントが年金を払わない理由
タレントの中には、お金が入るとすぐに使いきってしまう人がいます。そのため、年金を払っていないタレントは多いです。
私はマジシャンですが、仲間のマジシャンの中には、年金を払っていない人が結構たくさんいます。
サラリーマンの場合、年金は給料から自動的に天引きされる厚生年金です。天引きされるので、支払い忘れはありません。
いっぽう、マジシャンやタレントは、自ら年金を支払う必要がある国民年金です。この場合、自分で毎月振り込みをするか、口座振替の手続きをして、毎月引き落としにするかになります。
このとき、自分で毎月振込みをする方を選択すると、間違えなく振り込みが滞ります。
年金の恩恵は老後になってようやく受けられます。人間は心理的に、すぐに受けられないサービスに対して、自ら率先してお金を支払うことにためらいを感じます。
そのため、手元に年金を支払える額のお金があれば、つい遊びや趣味、生活費につかってしまいます。
また、年金の支払いが一回でも滞ると、その後の支払いが大変になります。滞納分が増え続けるので、それを埋め合わせるためには通常よりも多く支払う必要があるからです。
こうなると、ますます年金の支払いが重荷になります。
このような理由とは別に、年金の使われ方に不満を抱き、支払いを拒むタレントもいます。これについてはタレントに限らず、多くの国民も同じように思っているはずです。
たしかに、その通りだと思います。
ただ、それでも老後に何もしないである程度のお金が入ってくるのと、全く入ってこないのでは気持ちの余裕が違ってきます。
お金が入ってくる見込みがない中で老後を過ごすのは、生活面でも心理面でもかなり辛いことです。
老後の資金に余裕を持たせることは大切である
私の大先輩にあたるマジシャンでも、年金を支払っていなかったために、老後に苦労をしている人はいます。そうなると、稼ぐ方法は若いマジシャンに技術を教えるぐらいです。
しかし、年配と若いマジシャンとでは、ジェネレーションギャップがあります。年配マジシャンの技術や思考は、今の流行に対応できないことが多くあります。
そのため、いくら凄い技術を持っていたり、コンテストで優秀な成績を残していたりしても、若いマジシャンは高いレッスン料を払ってまで教えてもらおうとは考えません。
タレントは保障や後ろ盾がありません。自分の身は自分で守らなければなりません。いつどうなるかも分からないので、最低限の活動資金は残す必要があります。
老後の資金のことも考えれば、年金を払う必要性も理解できるかと思います。
知らなきゃ損する年金のメリット
更に、年金のメリットは老後にもらえる「老齢年金」だけではありません。
自分が死んだら、奥さんや子供は国から「遺族年金」(年間数十万円~100万円)がもらえます。自分が障害をもってしまった場合も、国から障害年金(年間100万円~200万円)がもらえます。
このように、きちんと年金を払っていれば、老後以外で不慮の事故や怪我が起きても、ある程度の生活の目処が立ちます。
人によっては「老後の分まで貯金すれば良い」と考えます。ただ、貯金の場合、簡単に引き出すことができるので、老後まで資金が残らないこともあり得ます。
そのため、貯金とは別に自由に使えないお金を積み立てることができる年金は、タレントにとってありがたい制度と言えます。