タレント活動をしていると、さまざまなことを要求されます。そのため、特にタレント初心者の頃は、さまざまな要求に応えようとベストを尽くして仕事に取り組もうとします。
しかし、ベストを尽くして仕事に臨んだにも関わらず、スタッフやクライアントからの評価が低い場合もあります。
タレント活動をする上で、あなた自身がベストを尽くしたことは重要ではありません。それよりも、いかに現場ごとに臨機応変な対応ができるかが求められます。
あなた自身が考えるベストが、相手にとってもベストであるとは限りません。タレントが現場やクライアントにとってベストな仕事をするためには、「ベストを尽くしてベターな仕事をする」ことが重要です。
ベストを尽くした失敗例
私はプロのマジシャンとして活動をしています。マジシャンになったばかりの頃は、必死に技術を高め、レパートリーを増やす努力をしました。
現場ではお客様に、「不思議で楽しい」と思ってもらえるマジックをするためにベストを尽くしました。
一生懸命マジックを考え、練習したので、お客様にも喜んでもらえました。私自身ではお客様に喜んでもらえたので、良い仕事をしたと思っていました。
しかし、現場からの評価は良くありませんでした。
それは、お客様に楽しんでももらおうとベストなマジックをすることに一生懸命になり過ぎて、演じる時間が長くなってしまったからです。
技術が高まり、レパートリーも増えてくると、「こうすれば同じマジックを演じるにしても、より不思議で楽しいことができる」ということが分かるようになります。
ところが時として、考えた通りのルーティーン(手順)で見せることに夢中になってしまい、周りが見えなくなってしまうことがあります。
お客様に楽しんでもらうことは大切です。しかし、それ以上にスタッフの仕事を妨げない配慮が大切なのです。
マジックをすることが原因で、スタッフに迷惑をかけてしまうのは、プロのマジシャンとしては失格です。
前述の場合、マジックの最後のオチまで見せようとベストを尽くしたことが間違えでした。
例え、ルーティーンの途中であっても、時間内にマジックを終わらせることが、現場にとっては大切だったのです。
別の言い方をすると、マジックは途中で終わると結果が分からないので、後味が悪くなります。
しかし、マジックの途中で終わったとしても、お客様には途中で終わったことによる後味の悪さを感じさせず、「まるで最高のオチであるかのように見せる技術が求められる」ということです。
協調性を乱さないためにはベターな仕事をする
私はマジシャンなので、例えがマジックになってしまいますが、考え方は他のジャンルのタレントにも当てはまります。タレントがベストを尽くして仕事に取り組むとこは大切です。
しかし、現場の状況は刻一刻と変化します。ベストを尽くすことが、自分本位な考えに基づく場合、それがスタッフにとってはベストでないことがあります。
現場ではたくさんのタレントやスタッフが協力しあって仕事をしています。あなたがベストを尽くすことで協調性を乱してしまっては、ベストを尽くしたことが逆効果になってしまいます。
大切なことは、それぞれの現場でベターな仕事をすることです。
そのためには、現場で求められていることに敏感になり、「ベストを尽くしてベターな仕事をする」ことが、タレント活動を続けて行くためには重要です。