ステージで演技をする場合、相手からあなたのパフォーマンスがどのように見えているのかを知ることは重要です。
それは、自分では問題ないと思っていたことでも、お客様目線でみると違和感となることがあるからです。
そこで、ステージでパフォーマンスする場合、後で客観的に見直すことができるように、自分の演技を撮影しておくことをお勧めします。
本番中の違和感を映像で確認する
本番と練習との一番の違いは、お客様の有無です。
どんなにお客様を意識して練習しても、お客様が実際にいる本番の状況を作ることができません。あなたは、お客様がいるのをイメージして練習することになります。
しかし、実際にお客様がいる本番では、「イメージ練習とは違う」と感じることがよくあります。
パフォーマンス初心者は、お客様が自分の演技を見てくれることを前提として練習します。しかし本番では、必ずしもお客様が自分の演技を見てくれているとは限りません。
そのため、「お客様にもっと注目してもらいたい」という気持ちから、本番では力が入りすぎて、練習通りの演技ができなくなる場合があります。
そして、このような場合、あなたの演技は客観的に見ると違和感があります。
その違和感とは、例えば、早く喋りすぎていたり、演技が不自然にオーバーになっていたり、緊張により演技が小さくなっていたりすることから生じます。
説明が難しいですが、練習では出来て当たり前だと思っていたところが、本番で意外と出来ていないということです。
そこで、このようなことにならないためにも、自分のパフォーマンスを撮影しておくことは重要です。
本番中の映像を、その時の心理状況と照らし合わせながら見返すことで、何が違和感の原因になっているのかを知ることができるからです。
客観的に見て不自然なことを映像で確認する
私はマジシャンなので、自分の演技が客観的にみて不思議に見えているか確認します。マジックをより不思議に見せるためには、客観的に見て不自然(怪しいと思われるところ)なところを無くさなければならないからです。
そのため、自分の演技は可能であれば撮影します。
そして、実際に映像を見直し客観的みることで、不自然な部分に気付くことがあります。その中で、特に印象に残ったことをご紹介します。
マジックでは、注目してほしくない部分から相手の視線を逸らすために、ミスディレクションという技法を使います。
プロマジシャンになったばかりの頃は、まだミスディレクションについてよく理解していなかったので、マジックの解説本を読み、ミスディレクションについて学びました。
その本には、相手に気付かれないように物を隠し持つための手の形や、位置、体の向きや視線といった理論が書かれていました。
そして、私はその理論を忠実に守って演技をしました。
しかし、映像を確認すると、本来は注目されないために行なっていたはずのミスディレクションが、逆に不自然で目立ってしまっていることに気が付きました。
確かに理論上では、手に何か物を隠し持っていたとしても、指と指の間に隙間があれば向こう側が見えるので、何も持っていないように見えます。
ただ、その理論を実践するためには、普通の人なら絶対にしないような持ち方(業界用語で天海パームと言う)をする必要があるため、逆に客観的に見ると目立ってしまい、不自然であることに気が付きました。
このように、自分の演技を撮影し、後から確認することで、「ミスディレクションをするための理論的な持ち方よりも、指と指の間に隙間がない普通の持ち方」のほうが、自然で違和感が無いことに気付きました。
人は夢中になっていると視野が狭まり、客観的に自分自身を捉えることができなくなってしまいます。
客観的に見て不自然なことをそのままにしておくと、クセとして染み付いてしまい、後で直すことが難しくなってしまいます。
そのため、自分の演技を映像で確認し、客観的にみて不自然に感じるところを早く修正することが、良いパフォーマンスを行うための秘訣です。