業務以外のことをタレントの判断で行ってはいけない理由

業務以外のことをタレントの判断で行ってはいけない理由タレント業は、形のある物を売る仕事ではありません。演技であったり、声であったり、容姿であったりと無形な物を売る仕事です。

このような無形なものは、「物」という、価値が分かりやすい存在ではないため、どうしても低い価値で見られてしまうことがあります。

無形なものは軽くみられる

例えば、1万円の靴を買うとします。それは値札が示す通り、その靴に1万円の価値があることは、誰が見ても一目瞭然です。そのためお客さんは1万円を支払います。

しかし、ちょうどレジ前に置いてあった別の靴も気に入ってしまい、欲しくなったとします。

この時、お客様は「この靴もタダでにちょうだい」とは言いません。なぜなら、靴という物には価値があり、それが欲しい場合は、値札のお金を支払わなければいけないことを理解しているからです。

しかし、これが歌手の場合だと話が違ってきます。

ライブハウスで仕事を受けたとします。3曲歌って1万円の契約で仕事を受けました。しかし、3曲歌い終わった所で新しいお客様が入ってきました。

すると「新しいお客様が入ってきたからもうちょっと歌って」と平気で頼まれたりすることがあります。

これは、歌という無形な物の価値を全く理解していないことから出てくる言葉です。「歌なんて減るものではないんだから、ちょっとぐらいサービスして歌ってよ」という心の声が聞こえてきます。

私はマジシャンですが、日常生活でよく「何かマジックやって」と言われることがあります。

私はマジックを見せることが好きなので、もちろん少しはサービスで見せます。しかし、それだけでは満足することなく「もっとやって」とか「あっちの人にも見せてあげて」と、平気でいわれることもあります。

これは、マジックの価値を全く理解していないから出てくる言葉です。「手品なんてタダでやるものでしょ」と思われている証拠です

このように、タレントの仕事は無形であるため、その価値を理解してもらいにくいと言えます。

現場では良心と思って勝手なことをしてはいけない理由

タレントが現場に行くと、本来の業務内容ではないことを急にお願いされることがあります。

例えば化粧品の撮影で「ファンデーションを顔に塗っているシーン」の撮影の仕事だとします。

このとき現場で「全身も入れたシーンもついでに撮らせて欲しいと」言われたとします。タレントにとっては「大したことではないし、相手のためになる」と思って、全身の撮影も了解してしまいました。

しかし、これは絶対に行ってはいけません。現場で業務以外のことを頼まれた場合は、必ず事務所に連絡する必要があります。

事務所はタレントに付加価値を付けて商売をしています。

あなたの顔の撮影では10万円、全身も入れた場合は30万円というような価値を示し、クライアントと交渉しています。

そのため、タレントが勝手に全身撮影を許してしまっては、事務所が設定したタレントの価値の意味がなくなってしまいます。

現場にマネージャーが同行する場合であれば、このようなことになってもマネージャーが判断するので問題ありません。

しかし、タレント初心者のころは、全ての現場にマネージャーが同行してくれることはありません。

そのため、自分一人で現場に行き仕事をする場合は、例え現場で業務以外のことを頼まれたとしても、自分の勝手な判断で行わないようにすることが重要です。

無形な物事の価値を認識する重要性

マジックや音楽、ダンス……など、既に無形のパフォーマンスに取り組んだことがある人は、それらができるようになるまでには、時間とお金と努力が必要であり、それら無形な物の価値を理解しています。

しかし、タレント初心者でこのようなことに取り組んだ経験がない場合、無形なものに対する価値を理解することが難しく感じるかもしれません。

そこで、もしタレント初心者のあなたに仕事が来たとしたら、それは事務所やクライアントが、「あなたの価値を認めたから」であることをしっかりと認識して下さい。

その仕事がたとえ、声だけであったり、手や足だけであったり、通りすがりの人の役だけであったとしても、それは他の人にはない魅力があなたにあったからこそ、その仕事が回ってきたことになります。

そして、その魅力こそが、あなたにとっての価値となります。

タレント業を行うのであれば、自分では当たり前だと思っている無形なものに実は価値があるということを再確認しましょう。

そして、その価値をより高める努力を続け、価値を安売りしない考えが必要です。