多くの人は、マジシャンが使っているトランプに特殊な仕掛けがあると考えています。そのため、テーブルマジックを行なっている時は、お客様に「トランプを確認させて欲しい」とよく言われます。
しかし殆どの場合、仕掛けが無いトランプを使っているので、調べてもタネは分かりません。そして、そのようなマジックは、テクニックと数理的原理を利用することで不思議さを作り出しています。
トランプマジックをテクニックで行った場合
例えば、お客様に選ばれたトランプを当てたり、真ん中に入れたはずのトランプが一番上から現れたりするマジックは、あるテクニックを使うことで行うことができます。
この場合、タネはテクニックにあるので、トランプを調べてもタネを見つけることはできません。
そして、もう一つは、ミスディレクションというテクニックを使っている場合です。これは相手の視線を、見られたくない部分から逸らすためのテクニックです。
マジシャンはカードマジックの不思議さをより高めるために、このテクニックを使います。
例えば、トランプが宙に浮いたり動いたりする超能力系マジックは、ミスディレクションによって相手の視線が逸れた隙に、トランプにタネを加えることで行います。
また、相手がサインしたトランプが財布や糊付けされた封筒、更には未開封のペットボトルの中から出てくるマジックも、強烈なミスディレクションによって視線誘導すれば可能です。
このように、例え仕掛けのないトランプでも、テクニックやミスディレクションを使うことでマジックを不思議にみせることができます。そのため、トランプをいくら調べたところでタネを見つけることはできません。
トランプマジックをセルフワーキングで行った場合
そして、もう一つトランプを調べてもタネが分からない場合があります。それは、「セルフワーキングマジック」を行なったときです。
セルフワーキングマジックとは、数理的な計算によって考えられたマジックです。
ただ、これを文章で説明することは難しいので、考え方の例えを出します。
トランプと1年間には密接な関係があります。1年は365日で52週間あります。トランプはジョーカー2枚を除けば52枚です。次にトランプには1から13までの数字があるので、全て足してみると91になります。
続いてトランプには、♥♠♣♦(ハート、スペード、クラブ、ダイヤ)と4種類のマークがあります。これは1年で言う春夏秋冬、つまり季節になります。この四季を先ほどの91に掛けます(4×91)。
すると、364になります。
ただ、これでは1年間の365日に1日足りないので、ジョーカーを1枚足して365日となります。残り1枚のジョーカーは4年に1度訪れる「うるう年」のためのものです。
この例はマジックではないですが、このような、数理的原理を利用したトランプマジックをセルフワーキングマジックと言います。
そして、このようなセルフワーキングマジックの場合も、タネは計算なのでトランプを調べてもタネが分かりません。
以上のような理由で、お客様はトランプを調べてもタネを知ることはできません。
トランプマジックは種類が豊富で奥が深いマジックです。これはマジシャンから見れば、見せ方やテクニック次第でその演技は大きく変わるため、とてもやり甲斐があることです。
もしあなたにマジックを見る機会が訪れたら、その時は「トランプにタネがあるからマジックができる」という考えを捨てて下さい。そして、素直にマジックを楽しんでみて下さい。きっとトランプマジックの奥深さを感じることができます。