マジシャンやお笑いタレントの初心者は、納得のいくパフォーマンスができません。これは経験がないので当然です。そのため、納得のいくパフォーマンスが完成してから本番で演じようとします。
しかし、これではいつまでたっても上達しません。
納得のいくパフォーマンスが完成してから実戦で演じようとすると、納得がいかなければ実戦で演じないということになります。これでは本番経験を積めず、腕を上げることができません。
そのため、タレント初心者は、パフォーマンスが8割ぐらい完成したら本番で演じてみることをお勧めします。
ベテランタレントのパフォーマンスを見ると、あまりにも完璧すぎて、「そのような素晴らしいことはできない」と弱気になることがあります。
ただ、どんなにベテランであっても、最初から完璧なパフォーマンスができたわけではありません。
長い間、地道にパフォーマンスを続け、ウケた部分を加えたり、つまらなかった部分を削ったりしながら、少しずつ完璧なパフォーマンスに近づけていく努力をしてきたのです。
パフォーマンスは本番を繰り返すほど面白くなる
ベテランのパフォーマンスがおもしろい理由は、本番でたくさん演じてきたからです。本番で何度も繰り返されたパフォーマンスは、お客様にウケた部分を演技にたくさん反映させています。
しかし、タレント初心者が頭の中で「これはウケるだろう」と考えたネタは、本番でウケないことがよくあります。本番の経験が少ないので、お客様が本当に楽しめるネタがどういったものなのか分からないからです。
まずは、自分の考えを過信せず、常に間違えていると疑うことが大切です。
「頭で考えただけのパフォーマンスはウケない」と思えると、本番で演じ、お客様の反応を得ることがいかに重要であるかが分かってきます。
私はプロのマジシャンですが、初心者の頃は本当に何もできませんでした。そこで、初心者の頃にどのようにしてステージパフォーマンスを作ったかを説明します。
マジックはテーブルマジックという、トランプやコインを使った至近距離で楽しめるパフォーマンスが人気です。そのため、マジックバーやレストランといった場所で見せる機会はそれなりにあります。
しかし、ステージマジックはテーブルマジックほどの需要がなかったので、多くの実戦経験を積むことはできませんでした。
そのため、ステージマジックの依頼があったときは、ここぞとばかりに積極的に依頼を引き受けました。
ただ、正直、100%自信が持てるパフォーマンスはありませんでした。
そこで、テーブルマジックで自信が付いたパフォーマンスを取り入れながらショーを構成し、とにかく実戦経験を積むよう心掛けていました。
テーブルマジックの演技を、ステージでそのまま演じるには無理があります。ただ、トークや技法はステージマジックにも取り入れることができます。
そのため、テーブルマジック用に考えたパフォーマンスでも、ステージマジックで使えそうな部分は、積極的に取り入れて見せていました。
実戦で可能な限り演じ、お客様の反応を少しでも多く見て、それをパフォーマンスに活かすことを繰り返したということになります。
私の場合はこのようにして、お客様に確実に楽しんでいただけるステージパフォーマンスを組み立てていきました。
手応えに敏感になることの重要性
パフォーマンスを演じ続けていると、あるとき手応えを感じることがあります。この手応えを感じた時の演技こそが、ウケるパフォーマンスです。
ただ、手応えはそう簡単に感じることはできません。ひたすら本番を繰り返し、感じることができるのは少しだけです。
そのため、手応えに敏感になることが大切です。そうしなければ、貴重な手応えを見逃してしまい、ウケるパフォーマンスを作れなくなってしまうからです。
手応えを感じたパフォーマンスは、実戦でウケた経験を活かしているので確実にウケます。そして、実戦で手応えを得たパフォーマンスのみ、鉄板ネタとして残ります。
以上のように、一刻も早くウケるパフォーマンスができるようになるためには、たくさん本番で演じるしか方法はありません。
これがパフォーマンスが8割完成したら実戦投入するべき理由です。