あなたは、「スライトオブハンドマジック」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?おそらくほとんどの人が初めて聞く言葉だと思います。
スライトオブハンドマジックとは、ステージマジックにおいて手先の技術のみで見せるマジックのことです。略してスライハンドマジックとも言います。
道具に頼ったマジックでは差別化できない
マジックは必ずしも手先の技術が必要ではありまでん。例えば、人が切断されたり浮かんだりするイリュージョンマジックは、手先の技術をまったく必要としません。
ステージマジックで、帽子からうさぎが出てきたり、鍋の蓋を閉めるとケーキが出現するようなマジックも同様です。
そのため、やる気さえあれば、誰でもマジック道具をたくさん買い集めるだけで、一応マジシャンになれます。実際に市販されているマジック道具使い、ただ単に演じているだけのマジシャンもたくさんいます。
しかし、道具に頼ったマジックしかできない場合、他のマジシャンと差別化ができません。
特にタレント派遣業者のスタッフは、たくさんのマジシャンを見ています。そのような業者に売り込みをしても、道具に頼っただけのマジックでは他のマジシャンと区別してもらえません。
これといった特徴もないので、仕事を振ってくれることはありません。
技術で見せるスライトオブハンドマジックは真似できない
マジシャンであれば、誰が見ても「さすが」と思われるパフォーマンスをする必要があります。そのように思われるパフォーマンスがスライトオブハンドマジックです。
スライトオブハンドマジックはトランプ、コイン、ボール、シンブル(指サックのこと)、ウォンド(魔法使いが使うおまじないの棒)を使うのが代表的です。どのマジックもとても難しく、習得するまでには長い年月がかかります。
そのため、市販されている手品道具をただ単に演じるだけのマジシャンでは、簡単に真似することができません。
ちなみに私は、トランプを使ったミリオンカードというスライトオブハンドマジックに憧れていたので、ステージマジックショーのときはできる限り演じています。
ミリオンカードとは、空中からトランプをたくさん出現させるマジックです。たくさんのトランプを、ギミックを使わず技術のみで出現させる技を習得するには、何年もの年月を要しました。
また、スライトオブハンドマジックは、少しの失敗が大失敗につながります。この「絶対に失敗できない」という気持ちが、緊張感をさらに高めます。
このように、スライトオブハンドマジックはとても難しく緊張するパフォーマンスです。
マジシャンの技量とセンスが問われるスライハンドマジック
スライトオブハンドマジックは、マジシャンによって見せ方が違うので、同じパフォーマンスが存在しません。マジックでトランプやボールを使うことはよくありますが、マジシャンによって見せ方がそれぞれ異なります。
そのため、そのマジシャンがどのようにオリジナリティー溢れるマジックを見せてくれるのかを、楽しむことができます。
それに対して、市販の手品道具を演じているだけの場合、特にマジシャンはその演技を楽しめません。マジシャンはそういった道具が売られていることを既に知っているので、オチが分かってしまうからです。
私はマジシャンなので、勉強のためマジックショーを見に行くことはよくあります。
そこで、スライトオブハンドマジックを行うマジシャンを見ると、緊張感がひしひしと伝わり、マジックに対する熱い想いを感じることができます。そして、この想いはお客様にも確実に伝わっています。
マジシャンだからといって、必ずしもスライトオブハンドマジックができる必要はありません。ただ、習得するためには長い年月をかけ練習する必要があるので、マジックに対する熱い気持ちがなければ取り組めません。
そのため、スライトオブハンドマジックは、マジシャンの技量とマジックに対する心構えが試されるパフォーマンスといえます。